株式会社ストラテジックキャピタル(以下、「SC」といいます。)及びSCの運営するファンドは株式会社タチエス(以下「タチエス」又は「当社」といいます。)の株主です。SCはタチエスに対し、株主価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出いたしました。
SCの株主提案が可決した場合、当社の株価は2,117円まで上昇することに加え、一株当たり211円の特別配当を受け取ることができると想定されます。従って、2023年3月14日現在、株式を保有する株主は合計で+97%のリターンが獲得できると想定されます。
(注:株価の値上がり益は22/12期末BPS及び23/3期予想DOEを用いて23/3期予想配当を推定し、配当利回り6%で除して算定。政策保有株式の売却に伴う特別配当は税引後売却手取り金を全て配当に充当した場合を想定)
タチエスの株価のバリュエーションは、長期に亘って解散価値を下回って推移しています。また、足元でもPBRは0.55倍と非常に低い水準となっています。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER)
なお、同業他社の株価水準は解散価値を上回っている時期も長く、当社の株価低迷は、業界環境に起因するものではありません。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER)
割安な株価のバリュエーションは、ROEが株主の求める期待リターン、すなわち株主資本コストを下回っていることを示しています。SCが考えるタチエスの株主資本コストは9%程度です。しかし、タチエスのROEは株主資本コストより長期に亘り低いままであり、タチエスのリターンは投資家の期待を大きく下回っています。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及びSC推定。株主資本コストは、当社が小型株に区分されること、証券会社によるカバレッジが無いこと、業績変動が激しいこと、IR活動に積極的ではないこと等を加味し、株式会社デンソーの設定した株主資本コスト7%に+2%のプレミアムを付与)
ROE改善のために、タチエスは有利子負債を効率的に活用する必要があると考えます。当社の自己資本比率は、約46%と、同業他社であるトヨタ紡織が約36%であることを鑑みても、既に十分な水準にあると言えます。また、当社の有利子負債の平均利率は、2022月3月末時点で0.8%と、当然SC想定の資本コスト9%を大幅に下回り、レバレッジの活用により資本コストは低下するものと考えます。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER 及び有価証券報告書よりSC推定)
加えて、当社は時価総額を超える現金同等物を保有しており、資本効率を低下させる要因の一つとなっているとSCは考えます。過剰に保有するリターンの低い現金同等物の縮減は、当社の株主価値を向上させるためには必要不可欠です。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER。時価総額は2023年3月末現在。「現金同等物」=現預金+税引後投資有価証券(関係会社株式除く)+税引後賃貸等不動産時価)
当社は現行の中期経営計画において、ROE計画を、必達8%、目標10%としています。DOE6%設定時の配当性向はそれぞれ、75%、60%となり、当社の自己資本比率や現金同等物の水準を鑑みると、DOE6%は、全く問題ない水準であると考えます。
(出所:会社開示資料よりSC抜粋)
株主還元の方法としては、自社株買いも選択肢となり得ますが、当社の月別売買代金は約20~30億円程度で推移しており、市場からの自社株買いは更なる流動性低下が懸念されます。そのため、株主還元はDOE6%を基準とした配当を基本方針とし、自社株買いを行う場合は、別途安定株主から取得していただきたいと思います。
当社は2022年3月現在、74億円もの政策保有株式を保有しており、このうち26億円を占めるのがトヨタ紡織の株式です。
タチエスは有価証券報告書において、「連携強化」を目的にトヨタ紡織の株式を保有していると主張していますが、トヨタ紡織の伊藤取締役はこれを否定しています。しかし、タチエスの小松取締役はこのような伊藤取締役の発言を知ってなお、「タチエスが持つか否かはタチエスの判断だ」「タチエスとしてはビジネスチャンスが生まれることを期待して持っている」と主張しています。
SCとしては、「取引関係の維持・強化」が取引先の代表者に否定されてなお期待できるものとは到底考えられず、タチエス経営陣は政策保有株式について適切な判断が行えていないと考えております。そのため、一定の基準に沿った政策保有株式の売却を提案します。
以下のようにトヨタ紡織とタチエスの主張は矛盾しています。
(出所:2021年10月29日、2022年3月期第2四半期決算説明会での質疑応答よりSC抜粋)
(出所:2022年6月24日のタチエス株主総会での質疑応答よりSC抜粋)
タチエスがトヨタ紡織の株式を売却できない背景には、トヨタ紡織の姿勢も影響していると考えられます。トヨタ紡織の株式は、その58.8%が政策保有株主とトヨタグループによって未だに保有されており、批判の多い買収防衛策の導入よりも悪質であると考えます。
トヨタ紡織の伊藤取締役の発言が真実であれば、トヨタ紡織の株式を政策保有株式として保有している各社は、タチエスと同様、一方的に何らかのメリットがあることを期待して保有していることになります。しかし、トヨタ紡織の政策保有株主の保有割合は、17.9%にも上ります。SCとしては、これほどの株式が、政策保有株主側の一方的な思い込みによって保有されているとは考えづらく、トヨタ紡織がタチエスを含めた政策保有株主各社に保有を要請しているのではないかと懸念しています。
そこで、SCは、タチエスに対し、トヨタ紡織など政策保有株式の発行会社の方針も踏まえた、明確かつ合理的な基準に基づいた政策保有株式の売却を提案します。
そして、トヨタ紡織に対しては、政策保有株主に対する株式の売却を促すこと、タチエスはトヨタ紡織株式を売却すること、両社が明確な行動を通じてSCの懸念が杞憂に過ぎないと証明することを強く期待します。