「天下り」というESG課題

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弊社及び弊社の運営するファンド(“弊社”)は日本証券金融株式会社(“日証金“)の株主です。
弊社は、日本銀行、財務省及び東京証券取引所(“東証“)の日証金に対する天下りの実態解明を求めるため、日証金の臨時株主総会の招集を請求しています。

株主の皆様におかれましては、「天下り」というESG課題の実態解明を求める弊社提案にご賛同いただけますよう、お願い申し上げます。

天下りの全貌

日証金は日本銀行、財務省及び東証からの天下り経営者とともに歴史を歩んできました。以下では天下り役員の一部を抜粋して掲載します。全データはAmakudariDB.xlsxをご覧ください。


主なポイントは以下の通りです。


ただ天下りを行うだけではなく、日本銀行理事は社長、日本銀行局長は専務、財務省は副社長、東証は監査役/監査委員と、日証金内における役職さえも、天下り元のポストによって固定されているようにさえ見受けられます。

これが日証金の抱えるESG課題、「天下り」です

「S」:天下り規制逃れの実態

日本における天下りの問題は広く知られており、日本銀行、財務省それぞれが天下りを規制しています。しかし、日証金における天下りの実態は明らかであり、その規制は合法的天下りのルールに過ぎません。


現社長/会長の経歴は、天下り規制の無意味さを証明しています。両名は天下り自粛期間をアフラック生命保険で過ごし、その後日証金に天下りを行っています。両名の天下りは日本銀行の天下り規制を遵守し、お墨付きを得た天下りなのです。


その他、日本銀行は、IBM特別顧問、NTTデータ経営研究所会長など、アフラックと同様の天下り規制を遵守するための期間を過ごす天下り先を確保しています。

日本銀行、そして財務省をはじめとした中央官庁は巨大な責任と共に権力も手にするからこそ、天下り規制が設けられています。このような天下り規制逃れのシステムを利用して日証金に天下りが行われている事実は、日証金における「S」の致命的な課題です。

「S」:天下ると年収は3倍

天下り役員の問題点はそれだけではありません。日証金は財務省と日本銀行OBを少なくとも前職の倍以上、役職手当も含めれば前職の3倍以上の報酬で採用していると推定されます。

(出所:内閣官房内閣人事局『国家公務員の給与(令和4年版)』、日本銀行『日本銀行の役職員の報酬、給与等について(令和3年度)』及び『日本銀行における職員の給与等の支給の基準』。いずれも直近の開示資料を基に弊社推定。)


経営者を外部から3倍の報酬で招聘し、優秀な人材に経営を委ねることができて株主価値が向上するのであれば、それ自体は問題ではありません。しかし、3倍の報酬で招聘された天下り役員は報酬に見合う結果を出しているのでしょうか。

2014年、経済産業省は日本の上場企業に必要なROEは最低8%という指針を示しました。しかし、2025年度の日証金の目標ROEは僅か5%に留まります。


これは、「ROE8%など目指すことはできない」という、天下り役員の上場企業経営者としての資質不足、「ROE8%を目指す気も無い」という、前職の3倍以上の報酬を得たことによるインセンティブの欠落、両方を意味しているのではないでしょうか。

このように、高額報酬を伴う天下りは社会正義に反し、日証金の「S」における大きな課題なのです

「G」:日証金の“名ばかりガバナンス”

社外取締役であり指名委員会委員長の小幡尚孝氏は、このような現状を踏まえた弊社の「取締役候補の人材の育成はどうなっているのか」、という質問に対して自らの責任を感じる様子もなく他人事のように以下の通り回答しています。

“(取締役、執行役は)まず社内人材の育成、そして資質を有する人材を社外にも広く求めている。但し、内部昇格、社内育成の取り組みは私の見るところ必ずしも十分ではないと思う。”

― 2021年8月23日、弊社と小幡尚孝氏の面談における小幡尚孝氏の発言


しかし、指名委員長が何と言おうとも、天下りが70年以上も続いている状況下では、従業員は内部昇格の可能性を全く信じていないのです。

“「この会社で社長になれるなんて、考えたこともないですよ」
日本証券金融の社員からそんな言葉を聞いた。”

― 朝日新聞2022年7月14日「(取材考記)『日本銀行天下り』 日証金、指摘を改革の機会に 小出大貴」)


このような状況において、指名委員長が天下りを否定するような発言を行っていることは、「取締役候補の指名」というガバナンスの根幹が実質的な機能不全に陥っていることを示唆しています。


指名委員会は、本来であれば天下りを前提とした人事ではなく、公正な人事を行うために存在します。

しかし、日証金の指名委員会は今に至るまで、天下りに対する追求も株主への十分な説明も行っていません。それどころか、小幡尚孝氏の発言からは、指名委員会が天下りの追認機関となっていた実態が浮かびあがります。

“(指名委員会では)経営幹部の資質及び選定プロセスを定めており、指名委員である櫛田社長から提示されるリストをもとに審議している”
“(指名委員会が独自に候補者をリスト化することは)特段していない”

― 2021年8月23日、弊社と小幡尚孝氏の面談における小幡尚孝氏の発言


日証金においては、社外取締役や指名委員会によるガバナンスも同様に機能不全に陥っているのです。

ガバナンスを崩壊させる天下りこそ、「G」における大きな課題
なのです。

弊社が提案するESG課題の解決策

このような天下りの現状に対して、日証金の取締役会は日本銀行OBの選任についてはその資質が理由である、と主張しています。

“公共的役割を認識して業務執行ができること、金融・証券市場について広範な知見を有していること、金融・証券業界の変化に柔軟に対応できることなどを重視しており、日本銀行出身者はこれらの資質を有する”

― 2022年定時株主総会招集通知24ページより弊社要約


しかし、従業員や株主から見れば、日証金における過去そして現在の役員人事は、天下りありきの不公正な人事の結果ではないか、と考えざるを得ません。

そこで、弊社は天下り役員の選任過程が、天下り元の組織が関与していない日証金による公正な評価によるものであるか、天下り元の組織毎に調査を行う調査者の選任を求める3議案を決議するため、臨時株主総会の招集を請求しました。

(注:調査者候補である3名は、弊社及び日証金とは利害関係が無く、その独立性は担保されています。株主提案の詳しい内容及び調査者候補のプロフィールは臨時株主総会招集請求書をご覧ください。)


日証金の社外取締役までもが天下りを否定する以上、第三者による調査無くして日証金は自らのESG課題を認識することはできません。弊社の提案が可決されれば、今日まで天下りを放置してきた日証金の社外取締役に代わって、第三者である調査者が天下りの有無について調査を行い、その結果が報告書として開示されることになります。

本調査は日証金が「S」及び「G」に関する自社の課題を認識し、企業価値向上に資する真のESG経営の実現に向けた一歩を踏み出すために必要不可欠であると、弊社は確信しています。

求められる実効性の伴うESG投資

日本では80社を超える機関投資家がESG投資の実践を求めるPRI(責任投資原則)への署名を行うと同時に原則③「ESGの課題について適切な開示を求めます」についても実践すると表明しています。


2022年の定時株主総会において、弊社は天下り問題解決への第一歩として、日本銀行OBの報酬開示を求める株主提案を行いました。しかし、国内機関投資家の皆様から、株主価値やガバナンス向上に対する効果について厳しいご意見をいただきました。

(出所:各機関投資家の議決権行使結果の個別開示、日本銀行、GPIF及び企業年金連合の開示資料より弊社作成)


そこで、弊社は改めて臨時株主総会を招集し、ESG課題の透明化と解決に直結する天下りの調査を提案しました。日本銀行OBの報酬開示については「株主価値向上に資するとは限らない」等の理由で反対された、BlackRock、野村AM、りそなAM、朝日ライフAM、第一生命、T&D AM、等の機関投資家の皆様におかれましても、ESG課題解決のため、議決権行使基準に沿ったご判断をいただきたく存じます。

天下りというESG課題の透明化と解決を株主の立場から求めていく、真のESG投資を実践する投資家の皆様におかれましては、天下りの調査を求める提案にご賛同いただけますよう、お願い申し上げます。

日証金に対する弊社の問題意識

解散価値未満の株価

実際に日証金の株価を見ると、解散価値を大きく下回って推移しています。これは、日証金が日本の資本市場における唯一の証券金融会社として市場を独占している事業、および兼業が認められているその他事業の価値について、低い評価が継続していることを意味しています。

低迷するROE

日証金のROEは上場企業に最低限求められる水準である8.0%を大きく下回って推移しています。中期的な経営方針においても、ROEの目標は23/3期までに4%、26/3期までに5%という低い目標しか掲げられていません。
ROEが低い原因は、貸借取引業務のリターンが低いことのみならず、それ以外の事業等に係る賃貸不動産や有価証券等の低リスク低リターンの資産を保有していることも原因の一つです。このような資産は速やかに売却し、株主還元や本業への投資により株主価値向上を図るべきであると、弊社は考えます。


昨年の定時株主総会では、日証金の締役会は「中期経営計画のもと、ROEを着実に上昇させ、株主総利回りもTOPIX平均を有意に上回る水準」と主張していましたが、現状の水準は、ROE3.8%、PBR0.58倍です。
当社取締役会は、元々の株価水準が余りに低かったという事実を無視し、低迷する株価を正当化しています。
これは当社取締役会の株主価値に対するリテラシーの低さの表われです。

疑われる経営者としての資質

さらに、日証金の締役会は上場企業の経営者としての資質に「金融・証券市場に関する広範な知見」を掲げていますが、現任の櫛田社長については、代表的な経営指標であるROEへの理解も不正確であり、その資質が欠けていることが疑われます。

櫛田社長
(ROEに関する弊社の質問に対して)ROEの水準は3.8%だが、PBRが低いので、PBRで割り戻したROEは22/3期は6%を超えている。これは市場の株主から評価を得た前提とした、時価評価の純資産に対して我々が実現したリターンだ。これが6%だ

(出所:2022年3月期決算説明会より弊社抜粋。)

弊社
決算説明会の場で、ROEについて櫛田社長は「現在の時価総額を自己資本の代わりにROEのEと考えれば、ROEは6%を超えるリターンを実現している」という斬新な理論を開陳しておられた。
櫛田社長の理論によれば、同じ利益でも株価が下がるほど、時価総額のEに対してROEが高くなっていると自慢できてしまう。日証金は株主から預かっている資本、つまりBS上の自己資本の金額分の資本を使って経営が行われているのである。そもそもROEとは何なのか正確に理解して欲しい。
櫛田社長は証券アナリスト協会の理事なのだから、勝手な理論を作る前に、まずは証券アナリスト協会の教科書なりを読んで、最低限の勉強はしていただきたい。

(出所:弊社作成の2022年定時株主総会議事録より弊社抜粋。全文はこちら

その他、

弊社が特別顧問である増渕氏に辞任を求めた書簡はこちら

日本銀行に対して天下りの是正を求めた書簡はこちら①及びこちら②をご覧ください。

関係者の皆様へ

個人株主の皆様へ

個人株主の皆様におかれては、是非株主総会にご来場いただき、櫛田社長をはじめとした天下り役員の資質を見定めていただきたいと存じます。
そして、天下りの調査を行うべきか、また次回の定時株主総会において取締役の選任に賛成すべきか、議決権行使を行う一助にしていただきたく存じます。

法人株主の皆様へ

適切な議決権行使を行われますよう、お願い申し上げます。特に公益財団法人資本市場振興財団様におかれましては、「資本市場の健全な発展に寄与する」という貴財団の目的に照らし、資本市場のインフラたる日証金の透明性を担保するため、弊社の提案にご賛同いただけるものと強く期待しております。

機関投資家の皆様へ

PRI署名機関、スチュワードシップ・コードの受入れ表明機関の皆様におかれましては、ESGの観点からご賛同いただけることを期待いたします。国内の機関投資家の皆様には、可能な限り弊社がご説明に参りたいと考えております。お忙しいこととは存じますが、是非とも時間を割いていただきたく、お願い申し上げます。

報道機関の皆様へ

本件に関し、ご関心をお持ちいただける場合、可能な限り取材を受けさせていただきますので、下記お問い合わせ先までご連絡をお願いいたします。

お問い合わせ先

本件に関するお問い合わせ、ご質問等はこちらからご連絡ください。

FAQ(天下りの調査に対する誤解)

(誤)調査の実施は日証金に負担を生じさせる可能性がある?
(正)調査は日証金の業務運営にあたって負担が生じないよう配慮されます。
(正)調査者の請求する調査費用が過剰だと日証金が合理的に判断した場合、弊社が調査費用を立て替えます。
(誤)「株主価値/企業価値が向上するとは限らない」「株主の利益にならない」?
(正)日証金において天下りは確固たる事実として存在し、それによって株主価値が毀損され、さらに従業員のモチベーションは低下し、日証金の株価は長期間にわたり解散価値を下回っています。調査の実施により天下りの根絶、あるいは取締役・執行役候補選任の透明性の確保という観点で、日証金において真のESG経営が実現されることは株主価値/企業価値の向上に繋がります。
(誤)ガバナンスが強化されるとは限らない?
(正)第三者による調査の実施は、株主が「連続して特定の組織のOBを受け入れると株主が疑念を持つ」という意思表明となります。従って、日証金が今後取締役・執行役候補を選任する際に、その指名プロセスはより透明性が高くなり、株主価値向上を目指す資質とインセンティブのある方を選任することが期待でき、調査の結果に係わらず、ガバナンスは強化されます。
(誤)天下りと指摘された役員も社外取締役を中心とした指名委員会によって選任されているので、あえて調査を行う必要性に乏しい?
(正)指名委員長である小幡尚孝氏は2021年8月の弊社との面談において、「取締役会代表執行役、執行役に求められる資質及び選定プロセスを文章に定めており、それに基づいて候補者を決定している。指名委員である櫛田社長からリストが提示されるので、それをもとに審議・決定している」「(指名委員会が独自に候補者をリスト化することは)特段していない。」と発言しています。すなわち、指名委員会は櫛田氏が提示したリストの中から候補者を選ぶ、事実上の櫛田社長の追認機関と化しており、機能不全に陥っていることが危惧されます。
(正)何より、指名委員会は日本銀行、東証、財務省OBの役員就任が数十年続くという、“客観的“にみて異常な日証金の状態を目の当たりにしながら、従業員や株主に対して十分な説明を行っていません。本年になって、指名委員長の小幡氏は、強い疑念を抱いた弊社との面談を拒否しています。これらの事実こそ、指名委員会が“客観的“な観点から議論を行うという本来の目的を果たせていないことの証左であり、第三者による“客観的”な調査の必要性が認められる理由なのです。