文化シヤッターの主力事業であるシャッター事業は、極めて高い競争力・収益性を有しています。実際に、日本のシャッター市場において約4割のシェアを獲得しており、約5割のシェアを持つ三和ホールディングス株式会社(以下「三和HD」と言います。)とともに寡占市場を形成しています。
しかし、文化シヤッターの株価水準は解散価値を下回って推移しており、国内のシャッター事業で双璧を成す三和HDに大きく水を空けられています。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER)
PBRは一般的にROEと相関があることで知られています。PBRと同様に、2010年以降のROEを見れば、三和HDは上昇傾向であるのに対して、文化シヤッターは下降傾向であり、その推移は対照的です。そして、文化シヤッターのROEが低下したのは、自己資本比率の上昇が大きな原因の一つです。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料。22/3期は会社予想値)
自己資本比率の推移を見れば、三和HD・文化シヤッターともに上昇傾向にあることが把握できます。しかし、三和HDと異なり、文化シヤッターは蓄積した内部留保から得たリターンが不十分だった、すなわちリターンの高い投資先を見つけられなかったため、自己資本比率の上昇に伴いROEは低下しました。
このような現状を踏まえると、文化シヤッターは資本コストの低い有利子負債を活用して投資を行うべきであり、自己資本をこれ以上積み増すことがないように、資本政策を転換し、配当性向を100%に設定すべきであると、弊社は考えます。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料。22/3期は会社予想値)
また、資本政策に限らず、文化シヤッターの資本コストへの意識は不十分であると弊社は考えます。
文化シヤッターは、自社の株主資本コストを8.5%であると開示しています。しかし、ROEは9~11%を想定しており、ROE >株主資本コストとなっているにもかかわらず、実際には当社のPBRは僅か0.83倍となっています。弊社は文化シヤッターが株主資本コストを過小評価しているため、このような矛盾が起きていると考えます。
(出所:会社開示資料を元に弊社作成)
当社の資本コストが高い原因の一つは当社の買収防衛策にあると弊社は考えます。当社は9割近い機関投資家の反対を無視して、買収防衛策を継続しています。機関投資家の反対を踏まえて、多くの企業が買収防衛策を廃止する中、当社は頑なに買収防衛策を維持しています。
(2022年5月17日追記)当社の買収防衛策は2022年5月12日付で廃止されました
(出所:東証上場会社コーポレート・ガバナンス白書及び株式会社ICJ資料①及び②より弊社作成)
文化シヤッターは発行済み株式総数の35%を安定株主で固めており、これは機関投資家の反対を押し切って買収防衛策を維持するためであると、弊社は考えます。特に、第一生命保険やみずほ銀行などの日本を代表する金融機関が、当社の安定株主づくりに加担していることは残念でなりません。
(2022年5月17日追記)当社の買収防衛策は、弊社の株主提案に対する審議を待つまでもなく、2022年5月12日付の取締役決議により廃止されました。しかし、安定株主に支えられる当社の株主構成は依然として変化していません。安定株主だけで発行済み株式総数の1/3以上を確保することは、株主総会における特別決議の拒否権を確保することと等しく、経営の規律を高めるためにも、株式の持ち合い解消を早急に進めることを、弊社は強く期待します。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び有価証券報告書より弊社推定。当社が保有する政策保有株式の発行会社及び当社の株式を政策保有株式として保有していることを開示している会社を政策保有株主とみなした。安定株主は文化シヤッターの2020年定時株主総会において会社提案された買収防衛策の更新議案に賛成票を投じた会社が対象)
株式会社淀川製鋼所(以下「淀川製鋼所」と言います。)は有価証券報告書において、文化シヤッター株式のリターンが資本コスト未満であると明言しているものの、保有を継続すると記載しています。本来であれば淀川製鋼所は自ら定めたルールに従い、文化シヤッター株式を売却するべきです。
小倉社長を含めた文化シヤッター経営陣は、大株主である弊社に対して「淀川製鋼所に株式保有の圧力などかけていない」「株式保有と取引に関係は無い」と主張しています。従って、弊社としては淀川製鋼所の経営陣が「政策保有株式の保有の合理性は検証するが行動には反映しない」、という不可解な経営方針を取っていると考えざるを得ません。
淀川製鋼所の二田社長には合理的な経営判断を行っていただけるよう、弊社は文化シヤッターの大株主として強く期待します。
(出所:淀川製鋼所の有価証券報告書より弊社抜粋)
このような安定株主づくりを行わなくて済むよう、また取引先に不要な負担をかけなくて済むよう、そして何より文化シヤッターの資本コストを低減させるため、弊社は買収防衛策の廃止を提案しました。
(2022年5月17日追記)当社の買収防衛策は2022年5月12日付で廃止されました。それに伴い、買収防衛策の廃止を求める弊社の株主提案は2022年5月17日付で取り下げています。株主提案の取り下げの詳細についてはこちらをご覧ください。
文化シヤッターが買収防衛策を維持するのは、株主価値に対する当事者意識の不足に起因すると、弊社は考えます。本来であれば、当社の取締役は、「企業価値を高めることが最良の買収防衛策である」という認識のもと、高い株価のバリュエーション、すなわち「最良の買収防衛策」を実現することで、敵対的な買収者を遠ざけるべきなのです。
(出所:『東証上場会社 コーポレート・ガバナンス白書2021』より弊社抜粋)
しかし、現実は買収防衛策を維持するために安定株主づくりに努め、解散価値未満の株価を放置しています。これは、当社の取締役が株主価値を軽視している証左であると弊社は考えます。
そこで、弊社は文化シヤッターが株式報酬制度を導入し、取締役及び執行役員の株主価値向上に対するモチベーションの向上、強いコミットメントを示すべきであると考えます。但し、当社の現経営陣が株価を解散価値未満の水準まで低下させている事実も踏まえ、PBR1倍以上でのみ報酬が付与され、PBR1.5倍まで段階的に報酬金額が上昇する、条件付きの株式報酬制度の導入を提案します。
文化シヤッターの資本コストが高い理由は買収防衛策や株主価値に対する当事者意識の不足だけではありません。文化シヤッターは発行済み株式総数の約7%の自己株式を保有していますが、この自己株式の使途は一切開示されておらず、株主に不要な希薄化リスクを感じさせています。特に、当社は2013年に自己株式の売出を行い、株主価値を大きく毀損した実績があります。
従って、潜在的な希薄化リスクの観点から、弊社は自己株式消却の株主総会授権及び自己株式の消却を株主提案しました。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料より弊社作成)