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弊社及び弊社の運営するファンド(以下「ファンド」といいます。)は、東急グループの一員であり、東急建設株式会社(以下「東急建設」といいます。)の持分法適用会社である世紀東急工業株式会社(以下「世紀東急」又は「当社」といいます。)の株主です。弊社は世紀東急に対し、株主価値向上のため、株主提案権を行使しています。株主提案の詳細についてはこちらをご覧ください。
弊社は現会長の佐藤俊昭氏(以下「佐藤会長」といいます。)の相談役就任に反対しており、本ウェブサイトを通じてその問題提起を行っております。
弊社は、独禁法違反行為を黙認したと裁判所から認定され、当社に対する損害賠償の支払いまで命じられた佐藤会長の相談役就任を断じて許容できません。
当社は2011年から2015年にかけて、計6件の独禁法違反行為に関与していたと公正取引委員会に認定されています。当社が二度とこのような不祥事を起こさないよう、再発防止を徹底すべきことは言うまでもありません。
(出所:当社プレスリリースより弊社抜粋)
当然のことながら、当社は独禁法違反行為の発覚を受けて再発防止策を策定しています。そして、当社の開示を見る限り、2020年以降は再発防止策に沿って表面上は適切なモニタリングが行われていると見受けられます。
(出所:当社ウェブサイトより弊社作成)
しかし、当社は一連の独禁法違反行為の発覚を受けても、特定の人物に対する責任追及を行うことはありませんでした。そこで、弊社はファンドを通じて、2020年10月、一連の独禁法違反行為の責任追及を目的に、佐藤会長を含む当社取締役及び元取締役4名(以下「佐藤会長ら4名」といいます。)に対して当社に対する損害賠償を求める株主代表訴訟(以下「本訴訟」といいます。)を提起しました。
弊社は、当社の株主価値向上のため、そして独禁法違反と決別し、公正に事業を営むために責任の所在をその根拠と併せて明らかにすることは極めて有益であると考えています。しかし、当社の社外取締役である田村取締役は当社の考え方を根本的に否定しています。
(出所:2022年3月23日の面談より弊社抜粋)
田村取締役は、独立社外取締役であり、本来であれば、積極的に常勤取締役の責任を追及すべき立場にいる人物です。
社外取締役すら責任追及に対して強い拒否感を示したこの発言を踏まえると、弊社としては、取締役会と佐藤会長の間には、社外取締役も巻き込んだ不透明な馴れ合い関係の存在があると疑わざるを得ません。
本訴訟は、2022年3月28日、東京地方裁判所において判決が言い渡されています。本訴訟の判決において、佐藤会長ら4名は全員がその責任を認定され、当社に対する損害賠償の支払いが認められました。東京地方裁判所における判決の主なポイントは以下の通りです。
(出所:本訴訟の東京地方裁判所における判決文より弊社作成)
このように、当社の経営者は独禁法違反行為に気付かなかったのではなく、知りながら黙認していたことが裁判所により認定されました。「そもそも経営陣は独禁法違反行為を知らなかった」という前提で策定された再発防止策の実効性には疑念を持たざるを得ません。
従業員に研修を受けさせる、アンケートを行う、といった再発防止策は、経営陣が独禁法違反の前兆を捉え、未然に法令違反行為を防止するために行動することでその実効性が担保されます。経営陣が独禁法違反を黙認するとしたら、これらの再発防止策の実効性は根本から否定されます。
上述の通り、当社は独禁法違反に関する責任追及を自ら行うことはありませんでした。責任を取る行為に最も近いのは、2016年9月に当時社長であった佐藤会長を含む経営陣5名の取締役報酬の一部返上を発表したことのみです。
(出所:当社プレスリリースより弊社作成)
しかし、報酬の一部返上を発表した佐藤会長は相談役に就任しようとしています。
相談役はガバナンス上多くの問題が指摘されるのみならず、「社長の報酬の後払い的要素もある」と経済産業省のレポートで指摘されています。
(出所:経済産業省(2018年9月28日)『コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針』より弊社抜粋)
「報酬の後払い」として佐藤会長に相談役としての報酬を支給するのであれば、佐藤会長が社長であった頃に行った報酬の返上は、独禁法違反行為に対する制裁としての意味がなくなり、また、今後の再発防止の抑止力としての機能も失われてしまいます。
当社取締役会は相談役の廃止及び相談役の報酬開示を求めた弊社の株主提案に反対意見を表明しています。取締役会の反対意見のうち、弊社として、当社の主張が明確に誤っていると考える箇所について、弊社の意見を以下の通り記載いたします。
「提案4.相談役の廃止に係る定款変更の件」に対する取締役会意見
(出所:当社プレスリリースより弊社作成)
① 「独占禁止法違反行為が発覚した際には業界に先駆け課徴金減免申請の経営判断を行なう」
東京地方裁判所は、佐藤会長の「独禁法違反行為の存在を知りながら黙認する」という経営判断が、善管注意義務違反に該当すると認定しています。課徴金減免申請は、善管注意義務違反を犯した結果、実施せざるを得なかった出来事に過ぎず、経営判断として評価すること自体が不適切であると弊社は考えます。
② 「コンプライアンスに対して高い見識を有する人物」
独禁法違反を黙認したと認定された佐藤会長が、コンプライアンスに対して高い見識を有するとは到底考えられず、上述の通り経営判断の妥当性も否定されることから、不適切な評価であると弊社は考えます
「提案5.相談役の個別報酬開示に係る定款変更の件」に対する取締役会意見
(出所:当社プレスリリースより弊社作成)
③ 「指名・報酬委員会の諮問を経ることにより客観性を確保した・・・適切な報酬額を設定する」
東京地方裁判所における判決が下された後も佐藤会長に対して相談役就任を要請し続ける、当社の指名・報酬委員において、客観性を確保した報酬額を設定することは期待できません。
④ 「プライバシー保護の観点からも、具体的な金額の開示は制限されるべき」
上述の通り、報酬額の決定に際して、適切なガバナンスが機能しないのではないか、という強い懸念が明確な根拠と共に存在する以上、個人のプライバシー保護よりもこのような懸念の払拭を優先すべきであると考えられます。
当社経営陣が株主価値向上のための努力を怠っていることは、佐藤会長への対応だけでなく、当社の資本政策を見ても明らかであると、弊社は考えます。
当社のBPSは過去10年にわたって右肩上がりで推移しているのとは対照的に、PBRは解散価値未満の水準まで低下しました。これは誤った資本政策が招いたROEの低下が一因であると考えられます。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び当社プレスリリースより弊社作成。2022年5月11日現在)
実際にROEの水準は過去10年にわたって右肩下がりで推移している一方、自己資本比率は上昇し続けています。
(出所:QUICK ASTRA MANAGERより弊社作成。ROEは税引後経常利益を用いて算定)
弊社は、当社経営陣が資本政策の転換によって直ちに解決できる問題を放置し、株主価値を毀損し続けてきたことに対して、強い憤りを覚えています。そして、独禁法違反により毀損された株主価値の回復を図るべく、弊社は株主代表訴訟を提起し、結果として佐藤会長ら4名が当社に対する巨額の賠償責任を負うことになりました。
仮に、当社経営陣が自ら株主価値向上のために行動を起こしていれば、株主代表訴訟といった手段に出ることは なかったかもしれません。
なぜなら、弊社が真に求めているのは、毀損された株主価値の回復及び株主価値の向上です。そして、これらが取締役全員に課せられた使命であります。
取締役会が一丸となって株主価値の向上に取り組み、訴訟など起こされる余地がないほどに良い企業になっていただく、それが弊社の望む世紀東急の姿です。
世紀東急は今、ガバナンスに深刻な課題を抱えています。弊社は、当社経営陣が法令違反を犯したという事実を軽視しているため、これらの課題が解決されないのではないかと考えています。
そして、弊社は、世紀東急がこのような状態に陥ったのは、東急グループにも責任があると考えています。
本来であれば、企業グループはグループ企業間のシナジーを実現し、グループ企業の株主価値向上に寄与するものです。しかし、世紀東急において起こっていることは、東急や東急建設という安定株主を背景にした、単なる緊張感の無い経営ではないでしょうか。企業グループで不祥事が起きた際には、積極的にグループ企業が介入することで、経営改革を推進するべきであると弊社は考えます。
東急グループが標榜する「美しい時代へ」向けて、世紀東急が正しい歩みを進められるよう、グループ会社の管理を適切に行っていただけますよう、お願い申し上げます。
(※株主提案の詳細についてはこちらをご覧ください)