弊社及び弊社の運営するファンド(“SC”)は文化シヤッター株式会社(“文化シヤッター“)の株主です。
SCは文化シヤッターに対し、企業価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出しました。

株主提案の概要

  • 株主提案1.配当性向100%となる配当を実施すること
  • 株主提案2.大和ハウス株式を株主に現物配当すること
  • 株主提案3~5.会長職の廃止を通じて潮崎敏彦氏の退任を促すこと
  • 株主提案6.代表取締役の個別報酬を開示すること
  • 株主提案7.代表取締役の業績連動報酬の計算方法を開示すること
  • 株主提案8.オーストラリアでのM&Aに関する情報を開示すること

株主提案の背景及びポイント

積み上がる自己資本と低下するROE
配当性向100%となる配当を実施すること
  • 文化シヤッターの株価は、自己資本の過剰な蓄積によってROEが低下し、解散価値未満まで低迷しています。国内シェア2位を誇る優良な事業を営みながら、ROEや株価水準で同業他社には水をあけられているのです。
  • そこで、これ以上自己資本を蓄積しないように、新たな株主還元方針として配当性向100%を採用することを求めます。
妄想を根拠に保有する政策保有株式
まずは大和ハウス株式を株主に配当する
  • 文化シヤッターは約19億円を投じ大和ハウス工業株式会社(“大和ハウス”)株式を保有しています。しかし、大和ハウスは株式保有と取引の関係性を株主総会において否定し、さらに開示まで行っています。
  • 文化シヤッターは大和ハウス株式を「良好な関係の維持、強化」の目的で保有し、独自の判断基準に従いこの保有が合理的であるとしています。しかし、大和ハウスの意向を考慮すれば、これは単なる妄想に過ぎず、非合理的です。
  • したがって、大和ハウス株式の処分にあたり株主還元にも資する株主への現物配当を速やかに実施すべきであり、また、その他の政策保有株式についても、単なる妄想を「合理的」と判断する独自の判断基準を速やかに見直し、大和ハウス株式に限らず全政策保有株式の処分を求めます。
企業価値向上に対して意識の低い潮崎敏彦会長
会長職を廃止し、潮崎敏彦会長の退任を促す
  • 潮崎敏彦氏は、文化シヤッターの代表取締役会長でありながら、企業価値に対する意識が低いように見受けられ、株価低迷に対する危機意識も感じられません。そのような状態では、潮崎敏彦氏が企業価値向上のために取締役会でリーダーシップを発揮することは難しいと考えています。
  • また、文化シヤッターには代表取締役会長と代表取締役社長が存在し、どちらが会社の経営トップと言えるのか、最高経営責任者は誰なのか、曖昧な状態となっています。
  • そこで、会長職を廃止し、経営責任を明確にすることを求めるとともに、潮崎敏彦氏には退任していただくことを求めます。
企業価値向上のインセンティブとならない報酬制度
代表取締役の報酬金額とその計算方法を開示する
  • 文化シヤッターの経営陣は企業価値とは無関係に報酬を得ており、非効率的な経営を改善し、企業価値を改善するインセンティブがほとんど与えられていません。その結果、文化シヤッターは、事業の高い収益性に反して、株価は解散価値以下の水準で低迷したままです。
  • また、株式報酬の導入を決議した株主総会においては、株式報酬の金額は「ROE等」を基準にすると記載していましたが、有価証券報告書においては「収益性指標や資本効率性指標」を基準にすると変更するなど、その報酬制度の実態は不透明です。
  • そこで、代表取締役の報酬を計算方法とともに開示することを提案します。
豪州M&Aの成果に関する情報公開の拒否
適切な情報開示を行う
  • 文化シヤッターは2018年、約87億円を投じてオーストラリアにおいて同業を営むArcPac Garage Doors Pty Ltdの買収(“豪州M&A”)を実施し、オーストラリアに進出しました。これは、発表当時の文化シヤッターの時価総額の1割強に当たる大型M&Aでした。
  • しかし、文化シヤッターは2023年になった今でも「豪州M&Aの成果は開示するほどの規模ではない」「開示できるほど分析が進んでいない」と主張し、M&Aの結果を開示することを拒否し続けています。そして更なる海外M&Aに資金を投じようとしています。
  • そこで、次なる海外M&Aに挑戦する前に、まずは5年前の豪州M&Aの結果を開示することを提案します。

文化シヤッターの課題

解散価値を超えられない株価

文化シヤッターの主力事業であるシャッター事業は、極めて高い競争力・収益性を有しています。実際に、日本のシャッター市場において約4割のシェアを獲得しており、約5割のシェアを持つ三和ホールディングス株式会社(“三和HD”)とともに寡占市場を形成しています。
しかし、文化シヤッターの株価水準は中長期にわたり解散価値を下回って推移しており、国内のシャッター事業で双璧を成す三和HDに大きく水を空けられています。

(出所:QUICK ASTRA MANAGER)

株価低迷を招くROEの低下

PBRとROEの相関はファイナンスの世界で一般的に知られています。PBRと同様、文化シヤッターのROEは三和HDに水をあけられています。さらに、文化シヤッターは転換社債(“CB”)の償還期限が迫っており、現在の株価水準からみると転換権が行使され自己資本が増加し、実際のROEは図示したチャートよりも低下する見込みです。

(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料。23/3期は会社予想値。)

ROEを向上させるために

自己資本比率の推移を見れば、三和HD・文化シヤッターともにほぼ横ばいから上昇傾向にあることが把握できます。しかし、三和HDと異なり、文化シヤッターは蓄積した内部留保を有効活用できず、そこから得たリターンが不十分、すなわちリターンの高い投資を行えなかったため、ROEは低迷を続けています。

(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料。23/3期は会社予想値)

このような現状を踏まえると、文化シヤッターはこれ以上自己資本を積み増さず、資本コストの低い有利子負債を活用して資本コストを低下させてから投資を行うべきです。
そこで、これ以上自己資本を積み増すことがないように、資本政策を転換し、配当性向を100%に設定するよう提案します。

開示できない豪州M&Aの成果

なぜ豪州M&Aが重要なのか

文化シヤッターは2018年、豪州でM&Aを実施しています。概要は以下のとおりです。

  • • 買収したのは豪州の建材会社
  • • 総額約87億円を投下
文化シヤッターにとって、豪州M&Aは時価総額の1割強、2年分の設備投資を一挙に投じる大規模M&Aであり、それを機に豪州進出を果たしたという、極めて大きな意義を持つM&Aでした。

(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料。23/3期は会社予想値)

また、豪州M&AのためにCB発行を発表した翌日、文化シヤッターの株価は8.0%下落しました。豪州M&Aは、文化シヤッターの株主に大きな代償を強いる投資だったにもかかわらず、いまだに結果を公表していないことは不可解です。

(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料)

さらに、文化シヤッターは前中期経営計画(“中計”)、そして現行中計においても、海外事業の強化に注力すると公表しています。そして、現行中計では3年間で150億円を、主に海外M&Aに投下する方針としています。

(出所:会社開示資料)

SCは、文化シヤッターの投資や挑戦に反対はしていません。しかし、過去の大規模M&Aの成果を非開示としたまま、そして投資家からその評価を受けないまま、M&Aを推し進めることには強く反対します。

豪州M&Aの成果は「開示するほどではない」

SCは再三にわたり、文化シヤッターの経営陣に対して豪州M&Aの成果を開示するよう求めてきました。しかし、文化シヤッターの経営陣は次のように回答しています。

2022年8月の面談において、

市川治彦常務
セグメントごとに成り立つレベルの事業になっていない。ある程度事業が育ってきたら事業そのもののROICなどの開示も必要になってくると思うが、現時点において開示する必要を感じていない

2022年11月の決算説明会において、

市川治彦常務
オーストラリアに限らず、非上場の子会社については開示していない。それほど大きくない

2022年12月の面談において、

SC
なぜ豪州M&Aについて一切開示をしないのか
市川治彦常務
正直に言って、P/L以外の部分に関する分析が進んでいないという現状がある。
SC
4年前に行った豪州M&Aの分析ができていない状況で新しいM&Aに着手しても、市場の理解は得られない
市川治彦常務
早急に対処する。P/Lベースではかなり良好であり、連結で業績に良い影響がある。
SC
P/Lベースでさえなぜ開示しないのか
市川治彦常務
現状では子会社については、そこまでの開示が必要でないと考えている

これだけ大規模なM&Aを実行しておきながら、そして大株主から再三の要請がされたにもかかわらず、「重要ではないから」と切り捨て、開示を拒否する。そして株価を低迷させる。このような振る舞いは株主に対する不義理と言わざるを得ず、今の経営陣が新たなM&Aを実施するなど言語道断です。

SCは豪州事業単独の売上高、営業利益、当期純利益だけでもまずは開示することを求めます。

潮崎敏彦会長に対する失望

企業価値に対する意識の低さ

SCは潮崎敏彦氏のその発言から、企業価値向上に対する意識が不十分であり、株主から経営を負託された上場企業の取締役として、資質不足であると考えています。特に失望した潮崎敏彦氏との対話は以下のとおりです。

SC
企業価値とはどのようなものだと考えているのか
潮崎敏彦氏
人それぞれによって様々な見方がある。例えば、売上高の額、利益の額、従業員の数など全て含めて「企業価値」であると考えている

潮崎敏彦氏の考え方は、資本コスト経営を掲げる文化シヤッターの経営者の発言とはとても思えないものです。また、SCは2年以上にわたり文化シヤッターの経営陣と対話を重ねSCの考えをお伝えして参りました。それにもかかわらず、代表取締役会長である人物から、「企業価値」という言葉の意味さえまっすぐ答えていただけず、残念でなりません。

連結利益が増えたらM&Aは成功なのか

また、豪州M&Aについて、潮崎敏彦氏は次のように発言しています。

SC
豪州M&Aについて、どのように評価しているのか
潮崎敏彦氏
オーストラリアの事業はシェアも高く、それなりの業績も上げてくれている。その点で適正な買い物をした
SC
豪州M&Aについて、CBまで発行して実施したが、株主に対するリターンという観点ではどう評価しているのか
潮崎敏彦氏
それも含めて連結しているので、株主に還元していると考えている
SC
連結した分利益が増えており、リターンも出ているので成功したという評価をしているという認識でよいか
潮崎敏彦氏
そうだ

潮崎敏彦氏は、黒字の企業を買収して連結することで、「株主に還元している」「成功だ」と評するなど、M&Aを含む投資についての考え方、その評価についての理解が不十分と言わざるを得ません。SCは潮崎敏彦氏に「財務の専門家であれ」と要求するつもりはありません。しかし、このような発想では三和HDの背中は遠のくばかりです。

SCは潮崎敏彦氏が文化シヤッターの業務執行役、従業員であれば、その能力に異論を呈することはありません。しかし、潮崎敏彦氏は取締役であり、取締役は株主価値向上という株主からの負託に応える責任と義務を課されています。
潮崎敏彦氏が代表取締役会長として取締役会を主導することは、文化シヤッターの株主価値向上には資さない、とSCは考えています。

株主提案として、社長と会長の間で経営責任が曖昧な現状を是正するため、会長職の廃止を求めます。
そして、潮崎敏彦氏に対しては、役員を退任するよう求めます。

妄想を根拠とした大和ハウス株式の保有

文化シヤッター:「株式の保有で取引関係を維持・強化する」

文化シヤッターは2022年3月現在、76億円もの政策保有株式を保有しており、これには大和ハウス株式19億円が含まれます。
有価証券報告書において、文化シヤッターは大和ハウス株式を保有する目的について、次のように記載しています。

「シャッター関連製品及び建材関連製品等の取引を行っており、事業上の関係を勘案し、同社との良好な関係の維持、強化を通じて、当社の中長期的な企業価値向上に資するため継続して保有している。」

そして、このような保有目的を鑑みて、2023年3月現在に至るまで、大和ハウス株式の保有は合理的であり、大和ハウス株式は売却しない、という経営判断を行っているのです。

大和ハウス:「株式の保有は取引関係に影響が無い」

しかし、大和ハウスは文化シヤッターが株式を保有しても意味はないと明言しています。

SC
政策保有株式として大和ハウスの株式を保有する企業が、その株式を売却すると取引関係に影響が有るのか
大和ハウス
山田裕次 常務執行役員
大和ハウスも資金の有効活用のため、政策保有株式の売却に向けて動いている。取引先から政策保有株式の売却の要望があれば、大和ハウスから仕事の関係上でやめてくれと申し上げたことはない

(出所:2021年11月9日、大和ハウスの2022年3月期第2四半期決算説明会における質疑応答より)

大和ハウス:「取引先のために開示までした」

そればかりか、文化シヤッターのような取引先のために、株式を売却しても取引に影響が無いと、わざわざ開示まで行っているのです。

SC
大和ハウスとの関係悪化を恐れて売却に躊躇する文化シヤッターのためにも、大和ハウス株式を売却して問題ない旨の開示をお願いしたい
大和ハウス
山田裕次 常務執行役員
質問をいただいて、もしかしたら大和ハウスの株式を売却したら取引を縮減するのかもしれない、という懸念を持っている企業があるのではないかということに気づかされた。大和ハウスは2015年にコーポレートガバナンスガイドラインを企業価値向上や株主への説明責任を果たすために出している。この2022年2月の改定で、ここに取引先が大和ハウスの株式を売却しても取引の縮減等で妨げることはない、ということを初めて明示した

(出所:2022年6月29日、大和ハウスの定時株主総会における質疑応答より)

文化シヤッターの妄想と社外取締役の責任

SCは文化シヤッターに対して、度々大和ハウスの意向とともに大和ハウス株式を売却して問題無い旨、伝えてきました。しかし、文化シヤッターは一向に大和ハウス株式の売却を進めていません。

このような文化シヤッターが掲げる保有目的は、被保有会社が取引関係との関連を明確に否定していることから、単なる文化シヤッター経営陣の妄想と言わざるを得ず、このような妄言を堂々と有価証券報告書に記載した事実を恥じるべきです。

また、文化シヤッターの4名の社外取締役、飯名隆夫氏、藤田昇三氏、阿部和史氏および早坂善彦氏に対しては失望しています。社外取締役の役割は、このような非合理的な常勤役員の行動を監督し、真の企業価値向上に貢献することです。

SCが求める大和ハウス株式の処分は、文化シヤッターが株主価値向上のために行うべき経営改革の基本中の一つとして提案するものです。
SCは、文化シヤッター経営陣が政策保有株式の保有が合理的であるという誤った認識を正しく修正し、全ての政策保有株式の処分に踏み切っていただくことを期待しています。