弊社及び弊社の運営するファンド(“SC”)は文化シヤッター株式会社(“文化シヤッター“)の株主です。
SCは文化シヤッターに対し、企業価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出しました。
文化シヤッターの主力事業であるシャッター事業は、極めて高い競争力・収益性を有しています。実際に、日本のシャッター市場において約4割のシェアを獲得しており、約5割のシェアを持つ三和ホールディングス株式会社(“三和HD”)とともに寡占市場を形成しています。
しかし、文化シヤッターの株価水準は中長期にわたり解散価値を下回って推移しており、国内のシャッター事業で双璧を成す三和HDに大きく水を空けられています。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER)
PBRとROEの相関はファイナンスの世界で一般的に知られています。PBRと同様、文化シヤッターのROEは三和HDに水をあけられています。さらに、文化シヤッターは転換社債(“CB”)の償還期限が迫っており、現在の株価水準からみると転換権が行使され自己資本が増加し、実際のROEは図示したチャートよりも低下する見込みです。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料。23/3期は会社予想値。)
自己資本比率の推移を見れば、三和HD・文化シヤッターともにほぼ横ばいから上昇傾向にあることが把握できます。しかし、三和HDと異なり、文化シヤッターは蓄積した内部留保を有効活用できず、そこから得たリターンが不十分、すなわちリターンの高い投資を行えなかったため、ROEは低迷を続けています。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料。23/3期は会社予想値)
このような現状を踏まえると、文化シヤッターはこれ以上自己資本を積み増さず、資本コストの低い有利子負債を活用して資本コストを低下させてから投資を行うべきです。
そこで、これ以上自己資本を積み増すことがないように、資本政策を転換し、配当性向を100%に設定するよう提案します。
文化シヤッターは2018年、豪州でM&Aを実施しています。概要は以下のとおりです。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料。23/3期は会社予想値)
また、豪州M&AのためにCB発行を発表した翌日、文化シヤッターの株価は8.0%下落しました。豪州M&Aは、文化シヤッターの株主に大きな代償を強いる投資だったにもかかわらず、いまだに結果を公表していないことは不可解です。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び会社開示資料)
さらに、文化シヤッターは前中期経営計画(“中計”)、そして現行中計においても、海外事業の強化に注力すると公表しています。そして、現行中計では3年間で150億円を、主に海外M&Aに投下する方針としています。
(出所:会社開示資料)
SCは、文化シヤッターの投資や挑戦に反対はしていません。しかし、過去の大規模M&Aの成果を非開示としたまま、そして投資家からその評価を受けないまま、M&Aを推し進めることには強く反対します。
SCは再三にわたり、文化シヤッターの経営陣に対して豪州M&Aの成果を開示するよう求めてきました。しかし、文化シヤッターの経営陣は次のように回答しています。
2022年8月の面談において、
2022年11月の決算説明会において、
2022年12月の面談において、
これだけ大規模なM&Aを実行しておきながら、そして大株主から再三の要請がされたにもかかわらず、「重要ではないから」と切り捨て、開示を拒否する。そして株価を低迷させる。このような振る舞いは株主に対する不義理と言わざるを得ず、今の経営陣が新たなM&Aを実施するなど言語道断です。
SCは豪州事業単独の売上高、営業利益、当期純利益だけでもまずは開示することを求めます。
SCは潮崎敏彦氏のその発言から、企業価値向上に対する意識が不十分であり、株主から経営を負託された上場企業の取締役として、資質不足であると考えています。特に失望した潮崎敏彦氏との対話は以下のとおりです。
潮崎敏彦氏の考え方は、資本コスト経営を掲げる文化シヤッターの経営者の発言とはとても思えないものです。また、SCは2年以上にわたり文化シヤッターの経営陣と対話を重ねSCの考えをお伝えして参りました。それにもかかわらず、代表取締役会長である人物から、「企業価値」という言葉の意味さえまっすぐ答えていただけず、残念でなりません。
また、豪州M&Aについて、潮崎敏彦氏は次のように発言しています。
潮崎敏彦氏は、黒字の企業を買収して連結することで、「株主に還元している」「成功だ」と評するなど、M&Aを含む投資についての考え方、その評価についての理解が不十分と言わざるを得ません。SCは潮崎敏彦氏に「財務の専門家であれ」と要求するつもりはありません。しかし、このような発想では三和HDの背中は遠のくばかりです。
SCは潮崎敏彦氏が文化シヤッターの業務執行役、従業員であれば、その能力に異論を呈することはありません。しかし、潮崎敏彦氏は取締役であり、取締役は株主価値向上という株主からの負託に応える責任と義務を課されています。
潮崎敏彦氏が代表取締役会長として取締役会を主導することは、文化シヤッターの株主価値向上には資さない、とSCは考えています。
株主提案として、社長と会長の間で経営責任が曖昧な現状を是正するため、会長職の廃止を求めます。
そして、潮崎敏彦氏に対しては、役員を退任するよう求めます。
文化シヤッターは2022年3月現在、76億円もの政策保有株式を保有しており、これには大和ハウス株式19億円が含まれます。
有価証券報告書において、文化シヤッターは大和ハウス株式を保有する目的について、次のように記載しています。
「シャッター関連製品及び建材関連製品等の取引を行っており、事業上の関係を勘案し、同社との良好な関係の維持、強化を通じて、当社の中長期的な企業価値向上に資するため継続して保有している。」
そして、このような保有目的を鑑みて、2023年3月現在に至るまで、大和ハウス株式の保有は合理的であり、大和ハウス株式は売却しない、という経営判断を行っているのです。
しかし、大和ハウスは文化シヤッターが株式を保有しても意味はないと明言しています。
(出所:2021年11月9日、大和ハウスの2022年3月期第2四半期決算説明会における質疑応答より)
そればかりか、文化シヤッターのような取引先のために、株式を売却しても取引に影響が無いと、わざわざ開示まで行っているのです。
(出所:2022年6月29日、大和ハウスの定時株主総会における質疑応答より)
SCは文化シヤッターに対して、度々大和ハウスの意向とともに大和ハウス株式を売却して問題無い旨、伝えてきました。しかし、文化シヤッターは一向に大和ハウス株式の売却を進めていません。
このような文化シヤッターが掲げる保有目的は、被保有会社が取引関係との関連を明確に否定していることから、単なる文化シヤッター経営陣の妄想と言わざるを得ず、このような妄言を堂々と有価証券報告書に記載した事実を恥じるべきです。
また、文化シヤッターの4名の社外取締役、飯名隆夫氏、藤田昇三氏、阿部和史氏および早坂善彦氏に対しては失望しています。社外取締役の役割は、このような非合理的な常勤役員の行動を監督し、真の企業価値向上に貢献することです。
SCが求める大和ハウス株式の処分は、文化シヤッターが株主価値向上のために行うべき経営改革の基本中の一つとして提案するものです。
SCは、文化シヤッター経営陣が政策保有株式の保有が合理的であるという誤った認識を正しく修正し、全ての政策保有株式の処分に踏み切っていただくことを期待しています。