弊社及び弊社の運営するファンド(“SC”)はガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社(“ガンホー“)の株主です。
SCはガンホーに対し、株主価値向上のため、以下の議案の決議を求めて臨時株主総会の招集請求を行いました。
時価総額は、現時点で保有している現金(=ネットキャッシュ)と、将来生み出す現金の価値(=事業価値)で決まります。
ここで、ガンホーの時価総額に占めるネットキャッシュの割合は上場する全ゲーム企業の中で最も高い91%に達します。これは、ガンホーの時価総額はほとんどが現時点で保有している現金の価値であることを意味します。
裏を返せば、ガンホーは将来に期待ができない事業価値が低い会社、つまり上場する全ゲーム企業の中で最も次のヒット作を期待されていない「一発屋」というのが投資家の評価です。
(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。2025年6月末時点。掲載企業は東洋経済においてゲーム業界に区分される全52社から、連結子会社として銀行を保有していたソニーGを除いて掲載。)
ガンホーの事業価値には、将来のゲームだけでなく、既にリリースしているパズドラの将来の収益も含まれます。SCは、パズドラが今後も毎期200~300億円、将来的に2000億円以上の収益を稼ぐと見込んでいます。
しかし、2000億円以上の収益を生み出すパズドラを含む事業の価値が僅か129億円と評価されているのです。
(出所:有価証券報告書及びQUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。2025年以降の「パズドラ」シリーズ売上高は、2024年を基準として毎年10%の減収で推移すると仮定している。)
時価総額から推し量るガンホーの価値は、本来のガンホーの価値に遠く及びません。パズドラ以降、1000億円と13年をかけてもパズドラ以外にヒット作を生み出すことができなかった森下社長が経営する限り、「ガンホーの財産は森下社長に浪費されるだけ」というのが市場の評価です。
(出所:有価証券報告書及びQUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。)
森下社長は経営者として、後述するように無責任かつ不誠実な経営を行っており、経営者として不適格です。このような不適格な経営者がいる限り、ガンホーに対するディスカウント評価は無くなりません。
そこでSCは、ガンホーの経営を正常化するために、そしてガンホーに対するディスカウント評価を解消し、株主価値を向上させるために、森下社長の解任を提案しました。
ガンホーは2012年以降、森下社長の指揮のもと1000億円以上の資金と13年の時間を投下しました。しかし、パズドラ以外ヒット作が無い「一発屋」の状態が続いています。当然、時価総額も営業利益もこの10年で大きく下落しました。
しかし、森下社長は責任をとって辞任するのではなく、むしろ自らの役員報酬を3億円超の水準まで引き上げています。
(出所:有価証券報告書及びQUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成。単位は億円。時価総額は2014年6月末から2025年6月末の期間を対象に算定し、自己株式を控除している。)
森下社長の報酬は、任天堂、スクエニ、カプコンやコナミなどゲーム大手の経営者に匹敵する水準です。たしかに、森下社長はガンホーにとって「企画・開発・監修まで全ての行程に携わる最高責任者」であり、経営者としての責任に加えて更に責任があるのかもしれません。
しかし、ガンホーの株価と業績を見る限り、森下社長はガンホーを道連れにして重い責任に潰されているだけです。責任を果たさず自らの報酬だけを引き上げていく行為は無責任と評価するほかありません。
(出所:有価証券報告書より弊社作成。各社のゲーム部門の業務執行の最高責任者を対象として、有価証券報告書において開示された個別報酬のうち退職金に相当する報酬を除く金額をもとに作成。バンナムはバンダイナムコエンターテインメントの担当役員、ソニーはゲーム分野の担当役員、副社長又は専務、コナミはコナミデジタルエンタテインメントの担当役員を対象としている。)
森下社長は2025年3月の定時株主総会において、株主に対して「ヒットは確実に出ている」と説明しています。
そして2025年5月の決算説明会では、具体的には「サモンズボード」と「ニンジャラ」がヒット作に該当すると説明しました。
実態として、ガンホーという会社から見れば「サモンズボード」と「ニンジャラ」から得られる収益は僅かであり、株主価値向上に寄与する「ヒット作」ではありません。
たしかに、ゲームクリエイターの目線では、これらは多くのユーザーに楽しまれる作品だと言えるかもしれません。しかし、下記の通り業績への貢献は僅かに過ぎず、ガンホーの経営者が「サモンズボード」や「ニンジャラ」をガンホーにおけるヒット作と評価すべきではありません。
(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)及び有価証券報告書より弊社作成。)
森下社長は経営者として、他のゲーム会社とは異なり、ガンホーにおけるゲーム開発の権限を自らに集中させてきました。しかし、クリエイターとしての森下社長が「一発屋」に過ぎなかったため、ガンホーも道連れで「一発屋」との評価が定着してしまいました。
ところで、真に才能あるクリエイターが取締役や社長を兼任することは適切なのでしょうか。
アニメーション映画で著名なスタジオジブリの宮崎駿氏や、「マリオの生みの親」として知られる任天堂の宮本茂氏は、取締役には就任しましたが社長を務めたことはありません。
また、株式会社スクウェア・エニックスで2010年からファイナルファンタジーXIVのプロデューサー兼ディレクターを務めている吉田直樹氏(“吉田P”)は、取締役の退任に際して以下のとおり発言しています。
(出所:「FINAL FANTASY XIV Letter from the Producer LIVE Part LXXXVI」(2025/3/14)よりSC抜粋)
そもそも、クリエイターと経営者に要求される資質は異なるものですし、既に才能を認められたクリエイターにとって、「取締役」や「社長」といった地位を煩わしく感じることは想像に難くありません。
森下社長はパズドラというホームランに加えて、「サモンズボード」や「ニンジャラ」といったヒット作を次々に生み出していると、少なくとも森下社長自身は評価しています。
森下社長が本当に才能あるゲームクリエイターならば、その才能を100%発揮するために、経営からは手を引き、ゲーム開発に専念していただくことがガンホーのためです。
森下社長が一発屋にすぎないゲームクリエイターならば、そのような人物にゲーム開発の全権を与え続けてしまった責任を取って直ちに経営者を退任していただくことがガンホーのためです。
森下社長にゲームクリエイターとしての才能があるか否かとは無関係に、現状の歪んだ開発体制は是正されなければなりません。
2025年3月総会で社外取締役として選任された任天堂出身の田中氏、アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(“AMT”)パートナー弁護士の原氏の2名の取締役について、招集通知以外の書類では記載されていた独立性に関する情報が招集通知には記載されていませんでした。
社外取締役の独立性は株主の議決権行使に影響を与える重要な情報であり、招集通知は議決権行使において最も重要な情報源です。それにもかかわらず、招集通知において単に「特別な利害関係はありません」との記載にとどめたことは、株主に対して不誠実です。
任天堂出身の田中氏とAMTの原氏の2名の取締役について、上述のとおり真に独立性があるとはいえません。その結果、実質的にガンホーはプライム上場企業に最低限求められている3分の1の社外取締役という基準を満たすことができていません。
また、大西取締役や宮川取締役と異なり、田中氏と原氏はSCの面談要請にも応じておらず、これはコーポレートガバナンスコード原則5-1(株主との建設的な対話に関する方針)に反しています。
実際に、東京証券取引所が公表した「IR体制・IR活動に関する投資者の声」では、改善が期待される事例として、社外取締役との面談を拒否する事例が取り上げられています。
(出所:東京証券取引所上場部「IR体制・IR活動に関する投資者の声」(2025/7/22))
取締役の解任に特別決議を求めることは、国内外問わず多くの機関投資家が取締役の保身につながるとして反対の姿勢を明確にしています。
SCは、森下社長の解任を普通決議で行うために定款変更を求めていますが、本来であればガンホーは自ら定款変更を行うべきです。
(出所:各社の議決権行使基準よりSC抜粋)