株式会社ストラテジックキャピタル及び同社の運営するファンド(以下、総称して「SC」といいます。)は株式会社淀川製鋼所(以下「淀川製鋼所」又は「当社」といいます。)の株主です。SCは淀川製鋼所に対し、株主価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出いたしました。
当社の株価バリュエーションは、1998年以降、PBR1倍を下回って推移しています。また、足元でもPBRは約0.7倍と非常に低水準となっています。当社の株価推移からは、当社の経営方針が、株主の利益を毀損してきたことが明らかであり、株主価値の向上のために経営方針や資本政策の転換が必要です。
(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成)
PBR1倍割れが常態化しているのは、ROEが株主資本コストに満たないことが主因です。SCは当社の株主資本コストは約9%程度だと推測していますが、ROEはその水準を大きく下回る状況が継続しています。また、中期経営計画におけるROE目標は僅か5%であり、株主資本コストを明らかに下回っています(なお、2024年3月8日時点で当社の株主資本コストをBloombergは10.2%、Quickは9.3%程度としています)。株主コストを上回るROE目標を設定し、実現に向けた中期経営計画を策定し直すべきでしょう。
(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成)
当社は、主力事業である鋼板関連事業以外の利益貢献が極めて低い状況です。特にロール事業は赤字になることも多く、清算を含めた経営改革の検討が必要です。不動産事業は、資本効率を上回る資本効率の実現が理論的に不可能(詳細後述)であり、賃貸等不動産やゴルフ場、迎賓館等の不要な資産は売却を行うべきです。
(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成)
また、地域別では、営業利益の大半を淀川製鋼所(日本)とSYSCO社(台湾)で賄っています。中国及びタイについては、参入時点の想定とは実態が異なる点も存在しており、撤退を含めた経営戦略の再検討を行う必要があると考えます。
(出所:当社公表資料より弊社作成)
当社の自己資本比率は、70%以上と非常に高水準であり、大手鉄鋼会社と比べても自己資本比率の高さは明らかです。これは資本コストを上昇させ、ROEを低下させるという両面において悪影響があります。当社がPBR1倍割れを解消するためには、株主還元方針を配当性向100%・DOE6%に変更することで、徐々に自己資本を圧縮し資本効率の改善を図ると共に、安定した株主還元を行っていく方針を示すべきです。
(出所:QUICK Workstation(Astra Manager)より弊社作成)
当社は約280億円もの政策保有株式を抱えています。政策保有株式は、多くの問題を抱えており、即座に全売却し、本業に投資しきれない売却手取り金は配当の原資とすべきです。
また、当社は複数の不動産を保有しています。しかし、不動産賃貸業では、資本コスト以上のリターンを実現することが理論的に不可能です。J-REITの分配金利回りは、2024年4月18日時点で平均4.4%、最高でも5.5%程度であり、株式と比べ、低リスク・低リターンの商品であるといえます。一方、当社が不動産賃貸業を行う場合、レバレッジ及び法人税の影響により、REITと同程度のリターンを確保することは困難です。投資家は、当社の株式とは別にREITへ投資する選択肢があるため、当社が不動産賃貸業を営むことは不合理といえます。賃貸等不動産、ゴルフ場、ヨドコウ迎賓館等の不要な資産は売却すべきでしょう。