株式会社ストラテジックキャピタル及び同社の運営するファンド(以下、総称して「SC」といいます。)は株式会社ワキタ(以下「ワキタ」又は「当社」といいます。)の株主です。SCはワキタに対し、株主価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出いたしました。
ワキタの株価のバリュエーションは、2010年以降、PBR1倍を下回って推移しています。また、足元でもPBRは0.80倍、保有不動産の含み益を考慮した修正PBRに至っては0.72倍と非常に低水準となっています。当社の株価推移からは、当社の経営方針が、株主の利益を毀損してきたことが明らかであり、株主価値の向上のために経営方針の抜本的な転換が必要です。
(出所:QUICK ASTRA MANAGERより弊社作成)
2023年3月、東京証券取引所は、上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請し、PBR1倍に満たない企業に対しては特に強い課題意識を示しました。当社はその要請に対し、2023年7月に「PBR向上の実現に向けた経営の推進について」を発表いたしました。しかしながら、新たな施策は「個人投資家向け説明会の開催」のみであり、その他は既存の開示を再掲しているに過ぎません。
(出所:ワキタ2023/7/7 「PBR向上の実現に向けた経営の推進について」より弊社作成)
IR機能を充実させる方向に異論はありませんが、当社のバリュエーションが低迷している理由は、ワキタの主張するように「中期経営計画(以下、「中計」といいます。)における取組内容の周知が不十分」である訳ではなく、「中期計画自体に問題がある」ためです。当社のROEは下のグラフの通り低空飛行を続け、中計におけるROE目標でさえ僅か5%であり、SCの考えるワキタの株主資本コスト8%程度を明らかに下回っています(なお、当社の株主資本コストをBloombergは7.4%、Quickは8.5%程度としています)。そのため、現状の中計ではいくらIRを充実してもPBR1倍割れを解消できる見込みは薄いでしょう。
(出所:QUICK ASTRA MANAGERより弊社作成)
また、SCが考えるワキタのWACCは6.7%程度です。会社全体のROICはWACCを下回る水準であり、ワキタが中核事業と位置付ける建機事業、チャレンジ事業と位置付ける商事事業については、大幅な資本効率の改善が急務です。
一方、不動産事業については、現状の不動産賃貸業では、WACC以上のリターンを実現することが理論的に不可能であり、ワキタが賃貸等不動産を保有し続ける合理性は皆無です。ワキタが不動産事業を継続したいのであれば、保有する不動産をREITへ売却のうえ、管理・運用業務に特化する等、抜本的な経営改革を行う必要があります。
(出所:QUICK ASTRA MANAGERより弊社作成)
J-REITの分配金利回りは、2024年2月時点で平均4.3%、最高でも5.5%程度であり、株式と比べ、低リスク・低リターンの商品であるといえます。一方、当社が不動産賃貸業を行う場合、レバレッジ及び法人税の影響により、REITと同程度のリターンを確保することは困難です。投資家は、ワキタの株式とは別にREITへ投資する選択肢があるため、当社が不動産賃貸業を営むことは不合理といえます。また、当事業で当社の株主資本コスト8%以上を実現することは不可能であり、PBR1倍割れの解消に向け、大きな足かせとなっています。
こうした状況から、SCは当社への投資を開始以来、不動産事業におけるREITの活用を提案してまいりました。しかしながら、当社はこの提案に反対し続け、昨年の株主提案に対する取締役会の反対意見でも、「不動産賃貸業を含む不動産事業は安定収益事業として重要な事業のひとつと位置づけており、不動産賃貸業の継続は当社の今後の安定的な株主還元に資する」と述べ、低い資本効率、バリュエーションを放置しています。
そのため、SCは、当社の企業価値向上に資する戦略の検討および取締役会への推奨を行うこと等を目的とした「企業価値向上委員会」の設立を提案いたします。
ワキタの自己資本比率は約70%と非常に高水準であり、同業他社と比べても自己資本比率の高さは明らかです。ROEが同業他社に大きく劣る水準で推移しているのは、この過大な自己資本も大きな要因と考えられます。このような現状を踏まえ、株主還元方針を「配当性向100%、DOE6%」に変更することを提案します。
(出所:QUICK ASTRA MANAGERより弊社作成)
2023年の株主総会では、配当性向を100%にするよう求める株主提案に対して、当社の取締役会は「2023年2月期から2025年2月期までの今後3年間、毎期、配当と自己株式を加えた総還元性向を100%とする方針を定めている」、「配当及び自己株式取得によって、株主の皆様に対する十分な還元を実現し、もって当社株式価値の向上を図ることは可能」との理由で反対しています。
しかしながら、当社の財務基盤が過剰に強固となっている状況も鑑みると、配当性向100%に加え、DOE6%を配当の基準と定め、株主還元を強化すべきです。ROEが6%に満たない場合は、配当性向が100%を越えることとなりますが、これにより徐々に自己資本を圧縮し資本効率の改善を図ると共に、安定した株主還元を行っていく方針を示すべきだと考えます。
また、SCは当社のような時価総額の小さい企業が自社株買いを行うことは流動性の低下に繋がるため、株主還元は配当で行う方が望ましいと考えています。当社の財務基盤が過剰に強固となっている状況も鑑みると、株主還元は配当を中心にし、自己株取得については当社株の発行済株式の50%程度を安定的に保有していると考えられる政策保有株主などから取得していただくことを期待します。
加えて、当社は依然として25億円程度の政策保有株式を抱えています。政策保有株式は、多くの問題を抱えており、即座に全売却し、配当の原資としていただきたいと考えます。
当社は、実質的に筆頭株主である創業家の脇田貞二氏が代表取締社長及び取締役会議長を兼ねており、取締役会の監督機能には疑問を持たざるを得ません。当社の株価はPBR1倍を恒常的に下回って推移しており、取締役会は、経営陣が株主価値の向上に資する業務執行を行っているか否かを監督する機能を強化すべきです。そのために、取締役会議長は、業務執行者ではなく社外取締役が務め、コーポレートガバナンスをさらに改善することを提案します。
また、当社の脇田貞二社長は、年間5,300万円を大きく上回る報酬を受け取っていると推定されます。その金額は当社より資本効率性にも優れ、規模にも勝る同業他社を大きく上回る水準です。株価水準が低迷する中で過大な報酬を得ていることによって、株主価値の向上に向けたインセンティブが欠如していることが危惧され、代表取締役の報酬を個別開示することを提案します。弊社の目的は社長の報酬を低く抑えることではありません。報酬に見合った株主価値の向上を実現していただきたいと考えます。