- 被政策保有されている株式が売却されることは株主価値の向上に資すること
- 政策保有株主に対して株式の売却を促していただきたいこと
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弊社及び弊社の運営するファンドは株式会社ワキタ(以下「ワキタ」又は「当社」といいます。)の株主です。弊社はワキタに対し、株主価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出いたしました。
弊社の株主提案が可決し、当社が政策保有株式を売却のうえ、賃貸等不動産を保有せずに管理運用するとの方針に転換した場合、ワキタ株主は一株当たり1,126円の特別配当を受け取ることができると想定されます。
ワキタの本来の株主価値は888億円と推定されます。しかし、実際の時価総額は598億円しかなく、差額の289億円は当社経営陣が毀損した株主価値であると弊社は考えます。
(注︓賃貸不動産、有価証券はいずれも処分時の税引考慮後。事業価値は各事業の営業利益及び減価償却費にEV/EBITDA倍率4倍を適用して推定。有利子負債等は有利子負債、設備関係未払金、リース債務及び解約不能なオペレーティング・リース取引の未経過リース料の合算値)
当社の株主価値が大きく毀損されているのは、税引後で542億円にも上る賃貸不動産が大きなディスカウント要因となる評価をされているからだと考えられます。
ワキタの株価のバリュエーションは、2010年以降、PBR1倍を下回って推移しています。また、足元でもPBRは0.59倍、保有不動産の含み益を考慮した修正PBRに至っては0.53倍と非常に低水準となっています。
2022年の株主総会では、弊社の複数の株主提案に対して、当社の取締役会は「経営方針と相反する」、「株主利益に資するものではない」等の理由で反対しました。
しかし、当社の株価推移からは、当社の経営方針が、株主の利益を毀損してきたことが明らかであり、株主価値の向上のために経営方針の抜本的な転換が必要なことは明らかです。
東京証券取引所も、PBR1倍に満たない企業に対しては強い課題意識を持っており、2023年春にも改善に向けた方針や具体的な取組の開示を要請する方針です。当社においても早急に対応する必要があることは言うまでもありません。
(東京証券取引所の方針はこちらをご参照ください)
(出所︓QUICK ASTRA MANAGER)
なお、同業他社の株価水準はPBR1倍を上回っている時期もあり、当社の株価低迷は、業界環境に起因するものではありません。
(出所︓QUICK ASTRA MANAGER)
割安な株価のバリュエーションは、ROEが、株主の求める期待リターン、すなわち株主資本コストを下回っていることを示しています。弊社が考えるワキタの株主資本コストは8%程度です。しかし、ワキタのROEは株主資本コストを大きく下回って推移しており、ワキタのリターンは投資家の期待を大きく下回っています。
(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び弊社推定。株主資本コストの算定根拠はこちら)
また、弊社が考えるワキタのWACCは6.4%程度です。会社全体のROICはWACCを下回る水準であり、とりわけ商事事業・不動産事業のROICは著しく低水準です。このような状況が長期に渡って継続している以上、不動産賃貸事業をREIT運営事業に転換する等の抜本的な改革が必要です。
(弊社によるREIT運営事業への転換による株主価値向上施策の説明資料はこちら)
(出所︓QUICK ASTRA MANAGER及び弊社推定)
2022年の株主総会では、資本コストの開示を求める株主提案に対して、当社取締役会は「株主資本コストの数値の開示自体が重要なのではなく、株主資本コストの把握を通じた収益計画等の構築が重要である」 等の理由で反対しています。しかし、長期に亘り資本効率性を低下させ、株価を低迷させてきた当社取締役会が、資本コストを正しく把握した収益計画を構築してきたとは言えないでしょう。
従って、当社取締役会には資本コストを開示した上で、自ら把握する資本コストが適切であるか否かにつき投資家と対話を重ねていただくことを強く期待します。
ワキタの自己資本比率は約70%と非常に高水準であり、同業他社と比べても自己資本比率の高さは明らかです。また、ROEが同業他社に大きく劣る水準で推移しているのは、この過大な自己資本も大きな要因と考えられます。このような現状を踏まえると、配当性向を100%に設定し、資本効率を改善すべきと弊社は考えます。
(出所︓QUICK ASTRA MANAGER)
2022年の株主総会では、配当性向を100%にするよう求める株主提案に対して、当社の取締役会は「2023年2月期から2025年2月期までの今後3年間、毎期、配当と自己株式を加えた総還元性向を100%とする方針を定めており、株主還元は十分」との理由で反対しています。
しかしながら、弊社は当社のような時価総額の小さい企業が自社株買いを行うことは流動性の低下に繋がるため、株主還元は配当で行う方が望ましいと考えています。また、当社の財務基盤が過剰に強固となっている状況も鑑みると、改めて配当性向100%の方針を定め、また加えて自己株取得については当社株を政策保有している先から取得していただくことを期待します。
ワキタがこのような株主価値を無視した経営に陥った原因の一つとして、経営トップに対する過剰な報酬の支給が考えられます。当社の脇田貞二社長は、年間4,700万円以上の報酬(※)を受け取っていると推定されます。その金額は当社より資本効率性にも優れ、規模にも勝り、株価のバリュエーションも高い同業他社を大きく上回る水準です。
弊社の目的は社長の報酬を低く抑えることではありません。株主価値向上と連動する報酬体系を実現していただきたいと考えます。
(出所︓弊社推定)
※有価証券報告書に記載の取締役報酬及び使用人分給与各々の平均値を合算している
当社は2022年2月現在、約31億円もの政策保有株式を保有しており、これには株式会社横河ブリッジ(以下「横河ブリッジ」といいます。)、極東開発工業株式会社(以下「極東開発」といいます。)の株式も含まれます。
弊社は当社株式への投資を開始して以来、株主提案を含め再三に亘り、政策保有株式の売却を求めてきました。しかしながら、2022年の株主総会における弊社からの提案に対し、取締役会は、「取引先の維持・拡大や新たな事業機会創出につながると判断される場合に限り、政策的に株式を保有する」、「コストとの見合いで個別に経済合理性が認められるか、保有する意義があるかについての検証を行い、取締役会の場で審議し、対応方針が決定されている」との理由で改めて売却する意向がないことを示しております。
弊社は「政策保有株式が取引の維持・拡大や新たな事業機会創出に繋がる」ということは事実と異なり、もし事実ならば、利益供与の疑いがあると考えています。また、当社は形式的な保有理由しか開示していないため、コストとの見合いでどの程度の経済合理性や保有意義があるのかについて、取締役会での審議結果を開示していただきたいと思います。
(政策保有株式に関する弊社の意見はこちらをご参照ください)
政策保有株式と取引関係の関連については、横河ブリッジの髙田社長と極東開発の藤本総務課長も決算説明会や、弊社との面談の中で、否定しています。