ワキタの株主価値向上に向けて

弊社及び弊社の運営するファンドは株式会社ワキタ(以下「ワキタ」又は「当社」といいます。)の株主です。弊社はワキタに対し、株主価値向上のため、株主提案権を行使して次の議案を提出いたしました。

株主提案の概要

  • 株主提案1.弊社代表を取締役として選任すること
  • 株主提案2.配当性向を100%とすること
  • 株主提案3.政策保有株式を売却すること
  • 株主提案4.取締役会議長を社外取締役から選任すること
  • 株主提案5.代表取締役社長の報酬を個別開示すること
  • 株主提案6.資本コストを開示すること
  • 株主提案7.PBR1倍以上を目指す計画を策定・開示すること

株主提案の可決によってワキタ株主が得られる想定リターン

弊社の株主提案が可決し、当社が政策保有株式を売却のうえ、賃貸等不動産を保有せずに管理運用するとの方針に転換した場合、ワキタ株主は一株当たり1,126円の特別配当を受け取ることができると想定されます。

株主提案の背景及びポイント

長期にわたる株価の低迷と経営改革の必要性
弊社代表を取締役として選任する
  • 当社の株価は2010年以降一度もPBR1倍を上回ること無く推移しています。2023年3月3日現在、当社の時価総額は598億円であり、時価で542億円にも上る多額の賃貸等不動産の保有は、全く株価に反映されていません。
  • 長期にわたる株価の低迷から抜け出すには、資本効率性の低い不動産賃貸事業をREIT運営事業に転換するような抜本的な経営改革や資本政策の変更が必要であり、経営改革の推進役として取締役1名の選任を提案します。
  • 資本市場における豊富な経験及び知見を有する弊社代表を取締役に選任することにより、ワキタ取締役会に資本コストを踏まえた経営方針を導入し、取締役会におけるスキルの多様性を確保するとともに、株主価値向上に貢献することが期待されます。(候補者の経歴はこちらをご覧ください。)
過大な水準に積み上がった自己資本
配当性向を100%とする
  • 当社の自己資本比率は約70%とすでに非常に高い水準であり、このように過剰に積みあがった自己資本が低水準なROEの要因となっています。資本効率の改善および安定した株主還元に向け、配当性向100%を提案します。
  • 当社は既に総還元性向100%を公約しておりますが、当社の時価総額は2023年2月末時点で約600億円程度であることに加え、安定株主比率が約50%程度と推測され、市場からの自己株式取得は流動性低下に繋がることが懸念されます。そのため、総還元性向ではなく、配当性向100%を株主還元の方針として定めるべきです。
  • そして、過大な自己資本を適正水準とするために、別途、政策保有株主から自社株買いを行うべきと考えます。
無意味な政策保有株式の保有
政策保有株式の縮減に向けて行動する
  • ワキタは「取引関係の維持・強化」を目的に政策保有株式を保有しています。しかし、取引先の経営トップは株式保有と取引の関係性を否定しているにも関わらず、ワキタ経営陣は「取引関係の維持・強化を目的で株式を保有している」と、取引先の経営トップの意向を無視した主張を繰り返しています。
  • ワキタ経営陣は政策保有株式の保有の是非について合理的に判断を行うことができていない可能性が高いため、明確な基準に基づいて政策保有株式を売却することを提案します。
創業家の経営に対するガバナンス
取締役会議長を社外取締役から選任する
  • 当社は、実質的に筆頭株主である創業家脇田貞二氏が代表取締社長および取締役会議長を兼ねており、取締役会の監督機能には疑問を持たざるを得ません。
  • そのため、取締役会議長は業務執行者ではなく社外取締役以外が務め、コーポレートガバナンスを改善させることを提案します。
経営者に対する報酬が過大である可能性
代表取締役社長の報酬を開示する
  • 上記のような非効率な経営及び株価の低迷が放置されている背景には、当社の報酬制度が原因としてあると考えられます。当社において、取締役の個別報酬は代表取締役が最終決定しており、代表取締役に対する報酬のガバナンスが機能していない恐れがあります。そして、株価が低迷した状態であっても脇田貞二代表取締役社長は年間4,700万円以上の報酬を自身に与えていると推定されます。
  • 当社における報酬ガバナンス向上を図るため、代表取締役の報酬の個別開示を提案します。
資本コストを無視した非効率な経営
加重平均資本コストを開示する
  • ワキタ経営陣が資本効率性を低水準に留めるような非効率的な経営を行う背景には、資本コストに対する意識の欠如があると考えられます。ワキタ経営陣が資本コストを念頭に置いた経営を実践し、株価のバリュエーションを高めることができるように、資本コストの数値と計算根拠を開示することを提案します。
長期間PBR1倍を下回る株価
PBR1倍以上を目指す計画の策定・開示を行う
  • 当社のPBRは、2010年以降一度も、解散価値である1倍を上回ること無く推移しています。長期にわたる株価の低迷から抜け出すには、抜本的な経営改革や資本政策の変更が必要です。
  • 東京証券取引所は、2023年春にも、PBR1倍に満たない企業に対し、改善に向けた方針や具体的な取組の開示を要請する方針であり、当社においても早急に対応することを提案します。

ワキタが抱える課題と解決策

本来の株主価値と乖離した時価総額

ワキタの本来の株主価値は888億円と推定されます。しかし、実際の時価総額は598億円しかなく、差額の289億円は当社経営陣が毀損した株主価値であると弊社は考えます。

(注︓賃貸不動産、有価証券はいずれも処分時の税引考慮後。事業価値は各事業の営業利益及び減価償却費にEV/EBITDA倍率4倍を適用して推定。有利子負債等は有利子負債、設備関係未払金、リース債務及び解約不能なオペレーティング・リース取引の未経過リース料の合算値)

当社の株主価値が大きく毀損されているのは、税引後で542億円にも上る賃貸不動産が大きなディスカウント要因となる評価をされているからだと考えられます。

PBR1倍を超えられない株価

ワキタの株価のバリュエーションは、2010年以降、PBR1倍を下回って推移しています。また、足元でもPBRは0.59倍、保有不動産の含み益を考慮した修正PBRに至っては0.53倍と非常に低水準となっています。
2022年の株主総会では、弊社の複数の株主提案に対して、当社の取締役会は「経営方針と相反する」、「株主利益に資するものではない」等の理由で反対しました。
しかし、当社の株価推移からは、当社の経営方針が、株主の利益を毀損してきたことが明らかであり、株主価値の向上のために経営方針の抜本的な転換が必要なことは明らかです。
東京証券取引所も、PBR1倍に満たない企業に対しては強い課題意識を持っており、2023年春にも改善に向けた方針や具体的な取組の開示を要請する方針です。当社においても早急に対応する必要があることは言うまでもありません。
(東京証券取引所の方針はこちらをご参照ください)

(出所︓QUICK ASTRA MANAGER)

なお、同業他社の株価水準はPBR1倍を上回っている時期もあり、当社の株価低迷は、業界環境に起因するものではありません。

(出所︓QUICK ASTRA MANAGER)

資本コストを下回る資本効率性

割安な株価のバリュエーションは、ROEが、株主の求める期待リターン、すなわち株主資本コストを下回っていることを示しています。弊社が考えるワキタの株主資本コストは8%程度です。しかし、ワキタのROEは株主資本コストを大きく下回って推移しており、ワキタのリターンは投資家の期待を大きく下回っています。

(出所:QUICK ASTRA MANAGER及び弊社推定。株主資本コストの算定根拠はこちら

また、弊社が考えるワキタのWACCは6.4%程度です。会社全体のROICはWACCを下回る水準であり、とりわけ商事事業・不動産事業のROICは著しく低水準です。このような状況が長期に渡って継続している以上、不動産賃貸事業をREIT運営事業に転換する等の抜本的な改革が必要です。
(弊社によるREIT運営事業への転換による株主価値向上施策の説明資料はこちら

(出所︓QUICK ASTRA MANAGER及び弊社推定)

2022年の株主総会では、資本コストの開示を求める株主提案に対して、当社取締役会は「株主資本コストの数値の開示自体が重要なのではなく、株主資本コストの把握を通じた収益計画等の構築が重要である」 等の理由で反対しています。しかし、長期に亘り資本効率性を低下させ、株価を低迷させてきた当社取締役会が、資本コストを正しく把握した収益計画を構築してきたとは言えないでしょう。

従って、当社取締役会には資本コストを開示した上で、自ら把握する資本コストが適切であるか否かにつき投資家と対話を重ねていただくことを強く期待します。

資本効率性が低水準に留まる原因

ワキタの自己資本比率は約70%と非常に高水準であり、同業他社と比べても自己資本比率の高さは明らかです。また、ROEが同業他社に大きく劣る水準で推移しているのは、この過大な自己資本も大きな要因と考えられます。このような現状を踏まえると、配当性向を100%に設定し、資本効率を改善すべきと弊社は考えます。

(出所︓QUICK ASTRA MANAGER)

2022年の株主総会では、配当性向を100%にするよう求める株主提案に対して、当社の取締役会は「2023年2月期から2025年2月期までの今後3年間、毎期、配当と自己株式を加えた総還元性向を100%とする方針を定めており、株主還元は十分」との理由で反対しています。
しかしながら、弊社は当社のような時価総額の小さい企業が自社株買いを行うことは流動性の低下に繋がるため、株主還元は配当で行う方が望ましいと考えています。また、当社の財務基盤が過剰に強固となっている状況も鑑みると、改めて配当性向100%の方針を定め、また加えて自己株取得については当社株を政策保有している先から取得していただくことを期待します。

株主価値を無視した高額報酬

ワキタがこのような株主価値を無視した経営に陥った原因の一つとして、経営トップに対する過剰な報酬の支給が考えられます。当社の脇田貞二社長は、年間4,700万円以上の報酬(※)を受け取っていると推定されます。その金額は当社より資本効率性にも優れ、規模にも勝り、株価のバリュエーションも高い同業他社を大きく上回る水準です。
弊社の目的は社長の報酬を低く抑えることではありません。株主価値向上と連動する報酬体系を実現していただきたいと考えます。

(出所︓弊社推定)
※有価証券報告書に記載の取締役報酬及び使用人分給与各々の平均値を合算している

政策保有株式について

当社は2022年2月現在、約31億円もの政策保有株式を保有しており、これには株式会社横河ブリッジ(以下「横河ブリッジ」といいます。)、極東開発工業株式会社(以下「極東開発」といいます。)の株式も含まれます。
弊社は当社株式への投資を開始して以来、株主提案を含め再三に亘り、政策保有株式の売却を求めてきました。しかしながら、2022年の株主総会における弊社からの提案に対し、取締役会は、「取引先の維持・拡大や新たな事業機会創出につながると判断される場合に限り、政策的に株式を保有する」、「コストとの見合いで個別に経済合理性が認められるか、保有する意義があるかについての検証を行い、取締役会の場で審議し、対応方針が決定されている」との理由で改めて売却する意向がないことを示しております。
弊社は「政策保有株式が取引の維持・拡大や新たな事業機会創出に繋がる」ということは事実と異なり、もし事実ならば、利益供与の疑いがあると考えています。また、当社は形式的な保有理由しか開示していないため、コストとの見合いでどの程度の経済合理性や保有意義があるのかについて、取締役会での審議結果を開示していただきたいと思います。
(政策保有株式に関する弊社の意見はこちらをご参照ください)

2022年株主総会でのやりとり

弊社
「当社の政策保有株式の保有目的は『取引関係の維持・強化』と開示されている。株式を保有していると、何故、取引関係が維持・強化されるのか、その因果関係を教えていただきたい。」
ワキタ 脇田社長
「政策保有株式の保有理由は、『新しい事業の創出、取引のさらなる拡大』と書くべきと考えている。ビジネスをやっていれば分かると思うが、良い商品やサービスでも相手に届かなければ駄目であり、その関係を作るために株式を保有している。トップ同士の信頼関係が生じる。新しい事業についても話が進みやすい。」
弊社
「質問に答えて欲しい。なぜ、株式を持っていると信頼関係ができるのか。」
ワキタ 脇田社長
「株式を保有することによるお互いの信頼関係である。」
弊社
「改めてお尋ねする。株式を持つと、なぜ信頼関係ができるのか。それは安定株主として、相手の経営者から遇してもらえるからではないのか。それから、株式を持たなければ届かない、話を聞いてもらえない、そのような先とは取引しなくて良い、そんな変な会社は淘汰されていくと思う。」
ワキタ 脇田社長
「信頼関係ができる理由は、安定株主であるからではないと考えている。株式を持たなければ届かない、のではなく、株式を持たせていただくからこそ関係が深まるということ。」
弊社
「政策保有株式については、次の機会に議論させていただきたい。」

政策保有株式と取引関係の関連については、横河ブリッジの髙田社長と極東開発の藤本総務課長も決算説明会や、弊社との面談の中で、否定しています。

弊社と横河ブリッジ/極東開発の対話内容

弊社
「政策保有株式として横河ブリッジ/極東開発の株式を保有する企業が、その株式を売却すると取引関係に影響が有るのか」
横河ブリッジ 髙田社長
「他社が当社の株式を持っていることに対しては、当社はコメントできる立場にない。当社からどうこう、というのは考えていない」
極東開発 藤本総務課長
「取引関係を悪化させるようなことは考えていない。世の中のルールで株式保有の有無を理由に取引について言ってはいけないとなっている」

ワキタと弊社との対話内容

弊社は、ワキタの経営陣とのオンラインを含めた面談による対話などのほか、書面でも意見を伝えています。全てを記載できませんので、以下ではその中のいくつかをご紹介します。

  • 2021年10月に送付した書面で弊社が表明した意見

    • 被政策保有されている株式が売却されることは株主価値の向上に資すること
    • 政策保有株主に対して株式の売却を促していただきたいこと

    全文はこちら

  • 2020年12月に送付した書面で弊社が表明した意見

    • 商事事業及び不動産事業からの撤退すること
    • 配当性向100%を設定すること
    • 中期経営計画を発表すること

    全文はこちら